忍者ブログ
[6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「瓦解する音って聞いたことある?」
「瓦解??」
ヴァッシュの問に、ウルフウッドは首をかしげた。
「あー…、うーんとね…。」
適切な言葉を探して、ヴァッシュは唸る。
「突然、何かが崩れ始める音。」
「そんなん、オドレと居ったら、いっつも聞いとるやん。むしろ聞き飽きたわ。」
「アー、ゴメンナサイ。」
ウルフウッドの言葉は否定できず、口先だけでヴァッシュは謝罪した。


けれど違うのだ。それとは。そんな音ではなく。
突如、カランと音がしたと思ったら、もう止める事は出来ず。
音を立てて崩れていく、世界。

音を立てて降っていく、船、船、船。
多くの命を乗せたまま。

瓦解の音に抗ったヒトとは、そのまま会えなくなった。

自分なら、どうしただろう。
ヴァッシュにはその答えを出すことが出来なかった。
だからその答えをずっと探している。
PR
引き返す事が出来なくなってしまったな、と、ウルフウッドの気配を感じながらヴァッシュは思う。

この星のどこにどれだけのシップが墜落しているか、正確な所は分からない。
墜落時、中の人がいくらか無事で、プラントも機能していればそこに集落ができる。規模が大きければ町になり、都市になる。

でも、そうで無い場合は。
こんな具合に、風にさらされて崩れていくだけだ。

ヴァッシュは幼い頃、この船に乗ったことがあった。
ヴァッシュ達の居る母船より、移民船に搭載されている機器類はずっと少ない。その代わり、移民団の生命維持に必要なプラントは多く載せられており、定期的に機器類、プラント双方のメンテナンスを行う必要があった。

レムに連れられて来たシップの中で、彼女の作業を手伝いながら、周りを見渡して。
薄暗く、静かな船に少し恐怖した。

多くの人がそこには居た。


「あなたたちに手伝って貰うと、仕事がはかどるわ!」
そう言って笑ったレムの顔が鮮明に思い浮かぶ。

結局、それ以降、他の船に足を踏み入れる機会は訪れなかった。
どんな最新の設備も、科学力も、時間の前には無力だと思い知る。

空気の分子一つも通さない筈の扉の隙間から入り込んだ砂が、シップの内部に積もっている。
以前ヴァッシュが来たときに付いた足跡も、上から被さった砂に消されている。

シャリ、シャリ、と、一歩ごとにシップの床が立てる音に、かつてそうで無かった時代の事を思い出してヴァッシュは少し心を痛めた。

スリッパの立てる少し柔らかい音。
足を止めたら、無音で。
振り返ったら、ただただ、無機質な廊下がヴァッシュの背後にあった。

「何変な顔しとんねん。」
ウルフウッドに声をかけられて、ヴァッシュは我に返る。
「あ、ああ、ゴメン。ちょっと、ぼーっとしてた。」

そうだ、そういえばここに誰かと来るのは初めてだった。
とヴァッシュは思い至る。
だからか、少し奇妙な感じがする。そもそも、今までは誰かを入れようと思ったことすら無かったのに。どうしてこの船に寄ろうと思ったのか。

「足元、気を付けてね。少し滑るから。」
「少しどころやないで。」
足の裏の砂を段差でこすり落としながらウルフウッドが答える。

ウルフウッドが傍に居る事をヴァッシュは時に忘れてしまう。他人を入れたくない場所に連れてきているという、こんな状況下ですら。
彼が自然体で居る時、ウルフウッドから気配を感じる事は出来ないし、足音も無いに等しい。喧しい印象は、意図的に自身が作っている物だとヴァッシュは思っている。
普通の靴で、重い荷物を背負ったままで、常に平然とした顔でウルフウッドは静かに傍らに居る。今のガチャガチャした彼の動きは、作ったものだろう。ウルフウッドがヴァッシュを現実に引き戻すために、あえて。
ヴァッシュは神の存在をさほど信じてはいなかった。
仮に居たとして、特定の存在だけに益や不利益を与えるようなものでは無い筈だ。

だからこれは偶然だ。
そのシップを見上げながら、ヴァッシュは何度もそう思う。

「おい、オドレ、ええ加減にせえよ。」
「キミは気が短いなあ。」

急かされて、ようやくヴァッシュはシップの腹部に足をかけた。
扉は少し上の方にあるから、そこから内部に入るためには滑りの良いシップの側面を僅かな足がかりだけを頼りに上っていかなければならない。

待っているかと思ったが、ウルフウッドもヴァッシュに付いてきた。

「別に面白いものがあるわけじゃないよ?」
「そんなん、よお分かっとるわ。」

あんな重い十字架を抱えて、よくまあ、こんな所を労なく上るよな、と、ヴァッシュは感心する。
ウルフウッドは人間の中では格段に身体能力が高い。だから多分、ウルフウッドを口実にして、途中で引き返す事はできないだろう。

と、重い扉を開けながらヴァッシュは思った。

ロックはとうに壊れている。だからもしこの重い扉を自力で開ける事ができれば、誰でも勝手に中に入れる。

プラントを積んでいない、金になりそうにもないシップの残骸に興味を持つ者が、ヴァッシュ以外にも居ればの話だが。
ひさーしぶりに、ウルフウッドが普通に出てくる話を思いついたので、投稿。

きっかけ↓

夢にSS木SSさんが出てきて、私をこう罵りました。

「そこが瓦解の城だって本当は分かっているのに、認めない人が多すぎる。和さんに至っては、瓦解の城だって認めた上で”それが何か?”って言って工事現場のヘルメット被って楽しんでるし。」

ワケのわからない内容で、実に本当のSS木ちゃんには申し訳ない。本物はこんな罵り方はしません。
まあ私は工事現場のヘルメット被って楽しみそうではあるけれど。

で、目が覚めて、「瓦解の城かー。」と思ったら、ぽんと話が思い浮かんだので、書けそうなら書こうかなーと思いました。
途中で心が折れたらやめます。
←←   前のページ    次のページ   →→
忍者ブログ*[PR]